2026/05/13 09:37
プランシェアイトという石を、初めて手に取りました。
仕入れ先が「30年間見たことがない」と言った石です。

写真ではどうしても伝えきれないので、記録として残しておきます。
1. プランシェアイトとはどんな石?
プランシェアイト(Plancheite)は、銅のケイ酸塩鉱物です。銅を多く含む鉱床の酸化帯——つまり地表近くで銅が風化・変質した環境で生まれます。繊維状・放射状の結晶集合体を作ることが多く、光に当たると独特のシルクのような光沢(シャトヤンシー)を見せます。
| 分類 | ケイ酸塩鉱物(銅ケイ酸塩) |
|---|---|
| 化学式 | Cu₈(Si₄O₁₁)₂(OH)₄·H₂O |
| 結晶系 | 斜方晶系 |
| 硬度 | 4.5〜5(モース硬度) |
| 色 | 鮮やかなターコイズブルー〜青緑 |
| 光沢 | シルク光沢〜ガラス光沢(繊維状結晶によるシャトヤンシー) |
| 主な産地 | コンゴ民主共和国(カンボーヴ)、ナミビア、アメリカ(アリゾナ) |
| 共生鉱物 | クリソコラ、シャッタカイト、マラカイトなど |
2. あの青はどこから来るのか
プランシェアイトの鮮やかなターコイズブルーは、銅イオン(Cu²⁺)による発色です。銅を含む鉱物はターコイズ、アジュライト、クリソコラ、マラカイトなど、どれも独特の青・緑・青緑系の色を持ちます。プランシェアイトもその仲間です。
ただし色だけではなく、繊維状の結晶構造が生み出すシルキーな光沢がプランシェアイト最大の個性です。光の角度によって表面がさざ波のように輝くシャトヤンシーは、他の銅鉱物にはなかなか出せない表情です。

3. 産地・カンボーヴについて
カンボーヴ(Kambove)は、コンゴ民主共和国の南東部、オー・カタンガ州に位置する鉱山都市です。カタンガ州はコバルト・銅・ウラン・コルタンなど世界有数の鉱物資源を持つ地域として知られ、世界の鉱物コレクター市場に数多くの名品を送り出してきた場所でもあります。
「カタンガ産」というラベルを見たことがある石好きの方も多いのではないでしょうか。ヘテロジェナイト、シャッタカイト、ジャメソナイトなど、カタンガ州は標本コレクターにとって夢の産地のひとつ。その中でもカンボーヴは銅鉱物の産出で特に知られています。
4. 今回出会った標本について
サイズは100〜119mm、2点合わせて830g。仕入れ先のディーラーが「30年間のソーシングで初めて見た」と記していた石です。それが2点同時に手元にやってきたこと自体、かなりの幸運でした。
- 色:深みのあるターコイズブルー。写真よりも実物の方が青の彩度が高い
- 光沢:シルク光沢が強く、角度を変えるたびに表面が波打つように輝く
- 結晶形態:放射状・ファン状の繊維結晶が集合。側面にロゼット状の形成も見られる
- 母岩:銅鉱床の褐色〜赤褐色の母岩との対比が美しい
- グレード:仕入れ元でAグレード認定
1点はお迎えいただきましたが、もう1点は手元に置くことにしました。
5. 似た石との違い——シャッタカイト・クリソコラ
プランシェアイトはしばしばシャッタカイト(Shattuckite)やクリソコラ(Chrysocolla)と混同されます。同じ銅ケイ酸塩系で、同じ産地に共生することも多いためです。
3つが混在・共生する標本も多く、肉眼での同定は難しいこともあります。ただしプランシェアイトの繊維結晶が作り出すシャトヤンシーは他の2つにはない独自の美しさで、見慣れると判別しやすくなります。
6. なぜこんなに希少なのか
- 産出量が極端に少ない:銅鉱床の酸化帯という限られた環境でのみ生成され、大規模な産出がほとんどない
- 産地が限られる:コンゴ・ナミビア・アリゾナなど産地自体が少なく、良質な標本が出る場所はさらに限られる
- 硬度が低く脆い:モース硬度4.5〜5と柔らかく、採掘・輸送で傷みやすいため良品が市場に出にくい
- コンゴの採掘事情:カタンガ州の鉱山は政治・流通の影響を受けやすく、標本が安定して入手できない
石の世界には、お金を出しても「そのとき市場にない」というだけで手に入らないものがあります。プランシェアイトはまさにそういう石。この記事がいつかこの石と出会ったときの手がかりになれば嬉しいです。
